拙なる日々

コロナウイルス対策の一環としての暇つぶしです。

「合戦」と「戦争」

私のような歴史好きは、「合戦」と聞くとワクワクしてしまいます。

古戦場を巡るのは至福のひとときですし、城跡を訪ねるのも、とても楽しい。正直に言えば、血の匂いのしない歴史的痕跡への興味は、ほとんどありません。

 

かといって、別に私に軍国主義的な思想があるわけではなく、むしろこれからの世界は、どれだけの困難が伴おうと、時間がかかろうと、国境撤廃を中心とした世界連邦体制を目指すべきであると考える、壮大なる絶対平和主義者であります。(このような考えはおとぎ話なのかもしれませんが、理想がなければ現実が理想に近づくことはないと思います。理想は思想であり、理想を支持する人が過半を超えたときに、その理想は現実になる。理想を理想として個々人が持ち続けることの大切さを、最近強く感じています。)

 

世間も似たような感じではないでしょうか。

大河ドラマはやっぱり戦国ものが視聴率も良いようですし、戦いで「殺す」「殺される」行為が残虐で非人道的なことと分かってはいても、やはり心が踊ってしまう。それは、生物としての人間にインプットされた何かが騒ぐからなのかもしれません。

 

ところが、このような私でも「戦争」となると、どんよりとした暗い気持ちになる。川中島合戦にはワクワクするのに、太平洋戦争となるとそうはいかない。それは一つには歴史的経過時間が異なることや、犠牲となった人の多寡があるのかもしれませんが、どうもそれだけではない気がします。何が影響しているのだろうと考えました。

 

広島と長崎では、原爆投下によって合わせて20万人以上の方が亡くなったといわれています。軍属はもちろん、ごく普通の一般市民、また日本人以外にも当時日本の植民地だった朝鮮や台湾の人々、アメリカ兵の捕虜など、様々な人が一緒くたに、一瞬に、今後持つべきであった時間のすべてを強制的に消失させられました。

私は原爆投下については、戦争行為を逸脱したとてつもない犯罪行為であると理解していますし、特に広島投下から3日後に行なわれた長崎への投下については、その結果がどのようなものになるのかを広島で十分承知したうえでのもの(当時のアメリカの能力からいって、投下後の広島の状況はほぼ掴んでいたと思います。)であることから、極めて悪質な虐殺行為であったと考えています。

 

戦後75年を経過したとはいえ、未だ日本は「敗戦国」であって、「戦勝国」であるアメリカから「そもそもあの戦争は、あなたたちが仕掛けたのだ」と言われれば口をつぐむしかない。しかしながら、100年後、200年後の世界の歴史家はきっと、アメリカの、いや偉大なる人類の歴史における大いなる汚点として、この行為を判定せざるを得ないのではないかと私は思います。

 

戦争という非常行動は、人間にこれほどの狂気と行為を生じさせる可能性がある。

そして、起きた。

このような残虐性を、きっと誰もが持つ可能性がある。

その悲惨な結果を、目をそむけずに自分のこころに受け止める。

 

日本がどうとかアメリカがどうとか、原因がどうとか、そういう言い訳がましい小さな視点ではなく、起きてしまった事実に対して、未来の歴史家的な視点で現代に生きる私たちがこのことを冷静に判定し、未来に先駆けて新たな道しるべをいま世界中でつけることができたなら、犠牲になられた方へのわずかばかりの報いに辛うじてなるのかもしれません。

 

ところで話しを戻して、なぜ「合戦」はワクワクするのに、「戦争」はそうでないのか?例えばアメリカが広島に攻め込むとき竹槍を装備し、迎え撃つ日本も竹槍であったならどうか?

アメリカは闇夜に乗じて密かに広島に上陸!
・対して日本は伏兵でアメリカ兵を混乱させる!
アメリカは広島市民に向けて「コウフクシタラ チョコレート アゲマス」のビラまき!
・日本人(特に子ども)動揺!密かに敵陣へ投降してチョコもらう者続出!
アメリカ、広島を占領!

「合戦」はこんなイメージで、原爆で有無を言わせず人を消し去る「戦争」とどこかが違う。不謹慎かもしれませんが、もし太平洋戦争がこのような戦いであったならば、ワクワクを感じるのかもしれない。

同じように残虐であっても、そこに人間的な心が感じられるか、感じられないか。「合戦」と「戦争」、その違いは、結局人間が維持できる心の限界点のようなものが分かれ目になっているのだと思います。


人間は、戦いを好む生物としての冷酷で残虐な一面を本能として持っている。だから「合戦」ものが大好き。

しかしながら、その一面には限界があり、「戦争」という程の規模と残虐性には逆に戦慄を覚えて、ブレーキがかかる。また、そのことが人類の種としての存続につながっている。

この辺りで結論を持っていきたいと思うのですが、どうでしょうか。