せっかく「日本一のおんせん県」大分に住んでいるので、暑くても温泉に入る!
…というわけで、別府の山の麓の見晴らしの良い露天風呂に、ぶらりと行ってきました。
ほとんど貸し切りの状態で、のんびりとぬるめのお湯に浸かる。
聞こえるは、セミの鳴き声ばかりなり。けたたましい静寂。
見えるは、無数のトンボたち。せわしなく舞っている。
ああ、日本の夏だねぇ。
お風呂に入っていると、することがなく、ただトンボを見る。
同じ所を行ったり来たり、ときどき空中で立ち止まったり、また進んだり。彼らは一体何のために、何を目的として、こんなにいそがしく同じ所を飛び回っているのだろう。
ああ、人も同じか。
だんだん暑くなってきたので、お風呂から出て体を休めていたら、トンボも一匹、目の前の蛇口に止まって、羽を休めました。突然実現した、人とトンボの代表者会談。
しばらく無言で見つめ合う。トンボは目がたくさんありすぎて、視線が合わせづらいね。向こうはこっちを、どのように眺めているのだろう。
そのとき突然、尻をジリッと噛まれた!
「痛っ!蚊か!?」
つまみ上げると、小蟻がジタバタもがいていた。
思わぬ第三者の介入。
「この野郎!まだお前のエサにはならないぞ!」
尻をポリポリと掻きながら、またお風呂に入りなおす。
トンボもまた、群れのなかに帰っていく。
見上げると、元気いっぱいの夏の空。雲がいそがしく流れている。
相変わらずの、セミの声。
舞いつづける、トンボたち。
尻を噛まれた、人ひとり。
みんな訳も分からずに、一生懸命生きています。