松本零士先生が、999号で旅立たれてしまった。
子どものときに読んだ「銀河鉄道999」は、何だか小難しく、ちょっとどう自分の頭の中で処理したものか、戸惑うような感じに思われた作品でしたが、30歳くらいで久しぶりに改めて読んだ「999」は、もう全然違う作品のように感じました。
それもそのはずで、作品の根底に「命とは何か?生きるとはどういうことか?」というテーマがずっと流れているわけですから、メシ食ってウンコ出しているだけのガキに理解できるわけがない。
永遠の命を手に入れるために999号に乗り込んだ星野鉄郎が、途中で降り立った様々な星の停車駅で日々を精一杯生きている人びとに出会い、命とは一体何なのか、生きるとは結局どういうことなのかということを知っていく。
生は限りあるが故に美しく、しかも、死は終わりではない。そういうことを旅の中での様々な触れ合いや経験から知っていくわけです。
「私自身の生とは一体何なのか?美しく生きるとはどういうことなのか?」
30歳くらいのときは、なんだかそんなことばかり考えていたような気がしますし、「999」の登場人物が放つ言葉が、ずいぶん私の心のなかに突き刺さってきたように思われます。
この時期に読んだ「999」は、とてもインパクトを感じました。
それから20年経過し、再びメシ食ってウンコ出しているだけの状態に戻っている今の私としましては、その頃を振り返って、遅くかかった中二病みたいなものだったのだろうと推測しています。生きるって、別にそんな高尚なものでもないや。
でも、少しは後遺症も残っている。
だから、松本先生が999号で旅立たれ、もう地球には戻って来ないことを知ったとき、とても悲しい思いを感じて、このような文を書いているのだと思います。
今でも「999」で教えてもらったことを実践しているものがあります。
「まず食べなさい。それからが男の戦いよ。」
詳しくは忘れましたが、まもなく殺すか殺されるかの大激闘が始まるかもしれない前に、食欲がないと言う鉄郎にメーテルが伝えた言葉。
ちょっとどうしようもない大クレームの解決交渉や、部下のとんでもないやらかしをお詫びに行く直前に、私の頭のなかのメーテルが今でも語りかけてくれます。
「まず食べなさい」と。
緊張して、何かを食べるような気分でないときでも、コンビニのおにぎりでもよいので、むしゃむしゃとかぶりつく。食べたということだけで、確かに立ち向かう勇気は出てきました。そして何とかなってきた。
「生きるとは、結局どういうことなのか?」
それは「食べることだ」と、今の私はそのように断言します。だって食べなきゃ、今頃とっくに死んでるよ。