拙なる日々

コロナウイルス対策の一環としての暇つぶしです。

コロナ禍においても、桜は満開。私の住む大分では、先週も満開だった桜が、1週間経った今でも盛大に花を咲かせています。花冷えと好天が続いたからでしょうか。

 

変わらぬ桜と対比して、変わったのは人。桜の下の宴が姿を消し、この春は花びらが静かに風に舞っているのみです。まあ花見の騒ぎが苦手な自分としては、今の方が好ましい。

 

少し昔のことになりますが、花見の名所といわれる場所にふらりと立ち寄ったときのこと。晴天の日曜日で、あちらこちらで人が集まり賑やかななか、一本の桜の木の下に一人の白髪の老人がぽつんと座っているのが目にとまりました。
手には一缶のビール。時々それに口を当てては、後はただ桜を見ていました。

 

ふっと思いました。桜にもし人格があるとすれば、きっとこのような感じかもしれない。

「今年も咲かせることができたか」

一年の労苦を一本のビールに収める。喧噪をよそに、舞い落ちる花びらをただ眺めながら。

 

私の見たものは、本当に桜そのものだったのかもしれないし、またはその老人の人生そのものだったのかもしれません。
時間が経っても記憶から消えない、過ぎし春の光景です。